12.WOWOWドラマ「フェンス」感想
特に理由はないが、子どもの頃から「テレビドラマ」というものをほとんど見てこない人生だった。
これまでに完走した作品は「お金がない(1994年)」「3年B組金八先生 第5シリーズ(1999年)」「銭ゲバ(2009年)」「ファーストクラス(2014年)」「ウツボカズラの夢(2018年)」「ドラゴン桜 第2シリーズ(2021年)」くらい。思い返すと、量の少なさよりもチョイスの絶妙さが気になるが…。
そんなドラマ初心者の私が、昨年二つのドラマに後追いながらハマった。
それは「MIU404」と「アンナチュラル」である。
共に1話1話のテーマ設定が素晴らしく、バディ作品として関係性が深まっていく展開にもアガった。
スポーツジムで有酸素運動をしながらiPadで見ていたが、ドラマが楽しいから並行しているウォーキングもあっという間で、期間中は体重がそこそこ落ちた(なお、視聴後は)
察しのいい方であれば気がついただろうが、「MIU404」も「アンナチュラル」も脚本家・野木亜紀子先生のお仕事である。有名な方であると後から知るが、いかんせんテレビドラマ初心者の私は2022年に「野木亜紀子というすごいドラマの脚本家がいる!」と世間から10年以上遅れて衝撃を受けるのである。
そうした中で「野木さん脚本で、沖縄を舞台にしたドラマが作られるらしい」という噂を各方面から耳にする。狭い島なので、情報もすぐに回る。
その作品こそが、WOWOWドラマの「フェンス」なのである。前置きが長くなったが、今回はフェンスの感想を少し書いてみたいと思う。
現在、2話まで公開済みだが多少のネタバレを含むのでご注意を。
「フェンス」を考える時に、どうしてもNHK朝の連続テレビ小説「ちむどんどん(2022年)」に言及せざるえないだろう。
「ちむどんどん」は沖縄本土復帰50周年のタイミングで作られた作品で、地元の人間としての期待感も相当だった。
沖縄は戦中・戦後、そして現在と政治的なイデオロギーの衝突の場として機能してしまっている側面があり、そのため沖縄描く際はどうしても作り手側の「沖縄への向き合い方」が問われる事となる。
そのため、沖縄を舞台にした話題作となると「政治的にどっちだ?」と期待と不安、様々な感情が押し寄せる。
しかし、「ちむどんどん」はそうした政治的な描き方以前の問題、「単純にお話としてどうかと思う」というレベルで批判された。政治的にどう描くかというステージにすら到達できなかったのだ。ドラマ弱者の私は「平日15分コツコツと半年見続ける」ということができず、自分の人間力の部分ですぐに脱落したが、義務感を持って見続けていたスマホ講座の生徒のみなさんから毎週愚痴を聞くこととなった。
「ちむどんどん」のトラウマで、野木亜紀子先生への信頼はあれど不安もいっぱいだった。
しかし、1話目を見るとその不安は吹き飛ばされる。
沖縄の現状を史実をもとに作品の中で織り交ぜ、沖縄の状況が分からない人にも入りやすいようにしている。正直、その視点は「リベラル」的な政治姿勢をもとに作られているが、「リベラルの欺瞞」も描かれており、フェアだと思った。
沖縄を知らない人に伝える、ドラマ作品としての「フリ・伏線」のためだろう。正直、1話目は政治的な話がかなり説明的に見えた。粉のポカリスウェットを濃く作ろうとしすぎて水に溶けきらない様に、「説明のための説明」として機能していて説教くさく見えたのも事実。ただし、それはある種の「覚悟」の様に受け止めることができ、ちむどんどんの先を行ったことは1話目でほぼ確定したと思う。
2話目は、単純にドラマとして面白さが加速する。クライムサスペンスとしての捜査シーン、主人公の背景、バティ要素などなど…。私の大好きな野木作品の味がどんどんし始める。
3話目以降がかなり楽しみである。
思った以上に良かったため、「WOWOWありがとう!」という気持ちと、「地上波でやってくれ!」というアンビバレントな思いを抱いている。
みんな、WOWOWに加入して最後まで見届けよう。