19.おまけのチャーハン

数年前、仕事の合間にふと入ったラーメン屋。偶然、店長と厨房スタッフが高校時代の友人だった。「お、コウ久しぶり!元気?食べていってくれ!」と喜んでくれた。

高校時代はよく一緒に遊んでいたが、卒業後はうっすらSNSで繋がっていた程度。mixi時代は結構交流していたと思うが、社会人になるタイミングでFacebookのフレンドになったと思うが、お互いほとんど更新していなかったため近況は分からなかった。

ラーメン屋で偶然再開して私もすごく嬉しかった。
店長は外回りの仕事があったようで、私が注文した直後にお店を出る。「ゆっくりして行ってな!」と魔理沙っぽいセリフを残して…。

15時前という中途半端な時間だったため、他に客はおらず、厨房の友人と私と二人で懐かしい話に花を咲かせる。

話ながらも手際よく中華鍋を振って、注文していたラーメンセットが到着する。

「セットの白米、チャーハンにしておいたぜ」
気の利いたサービスをしてくれる。そしてラーメンもチャーハンも美味い。

友人だから、サービスしてくれたから、関係なく心の底から喜べる味だった。

そして会計の時に驚きのセリフが飛び出す。

「さっき、チャーハンに変更したの、店長には内緒でお願いな」

おい!店長も、私も友人である。サービスしてもらう立場の私が主張する意見ではないとは思うが、「こいつは友人のラーメンセットの白米をチャーハンにする権限もないのか!」とちょっと笑ってしまった。

というのも、この厨房の友人は高校時代から子分体質で、色んな親分肌の同級生に可愛がられて重宝されていたのだ。「高校卒業して10年以上経っているけど、まだこの関係性で仕事しているのか…」と愛おしさが込み上げてきた。

お店の味は確かだったが、お店はほどなくてクローズしてしまう。
コロナ禍などもあり、飲食店は結構大変だったと思う。

そしてしばらくすると、違う同級生がオーナーとなって中華料理屋がオープンする。
ラーメン屋で厨房をやっていた友人は、ここの中華料理屋も任される。
やっぱりみんなから愛されていて、料理の腕も確かだからすぐに呼ばれる。
高校時代から、みんなの溜まり場にはいつもいたと思う。

新しくオープンした中華料理店は人気店で、評判がすごくいい。
お昼時は常に行列ができるレベルで、てんやわんやしているらしい。

先日、仕事が終わって夜遅くからラーメンを食べに行った。
お客さんの波も落ち着いていたようで、落ち着いて食べることができた。

その時である。

「これ、チャーハンサービスしておくよ」

と、注文していないチャーハンを出してくれた。

相変わらず美味しかった。

会計時、お店を出る時も、「(同級生の)オーナーに内緒でね」などとは言われなかった。
こそこそせず、彼は彼の権限で私に半チャーハンをサービスしてくれた。

「ちゃんと出世しているな…」と謎の感動を覚え、私はお腹も心も満腹で夜の国道330号線を走り抜けた。

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