7.電話

数年前、沖縄市の市民健康課から着信が入った。当時、市の健康診断をサボりまくっていた私は「健康診断の案内電話かな?」と予想し、受話ボタンを押す。しかし、それは意外にも仕事のオファーの電話であった。

毎年、健康増進のため大きい公園でウォーキングフェスをやっている。そのイベントの司会をお願いしたいとの内容だった。「え、(こんな健康と程遠い)私でいいんですか?」と何度も確認したが、担当の職員の方が別のイベントで私の司会を見て、そこからのオファーとのこと。正直、メチャクチャ嬉しい流れでのオファーである。

休日の朝に市民数百人が集まり、各々のペースで数キロウォーキングをする。タイムや順位は競わない。スタート前に来賓挨拶や準備運動、諸々の説明などで司会が必要になる。ゴール後は、それぞれで解散していくため、閉会式はない。イベントはいい意味の緩さがあり、参加する市民の皆さんのウォーキング中は、ステージスタッフの方と談笑しながらゴールを待つ。正直、稼働時間よりも待ち時間の方が圧倒的に長い。休日の朝から天気のいい公園で健康的なイベントに参加し、かなり気持ちがいい。その上(わずかではあるが)ギャラまでいただける。楽しく、やりがいのある仕事だなと帰路につく。

こうしたイベントに携わったため、私も少しは健康意識が高まり、市の健康診断を受けた。数値は良くなかったが、まずは診断を受けることが第一歩だと言い聞かせる。

翌年も市民健康課から着信が入る。「来月もあのイベントやるんですが、スケジュールいか」「やります!」即答する。

2度目ともなると、段取りもしっかり頭に入っているため司会はよりスムーズに出来た。最初から最後まで一貫して楽しい。一年ぶりに会うスタッフの方と近況報告をしながら、ゴールしてきた方に適宜「お疲れ様でした」と声をかける。参加者の方からも「またあなただね」と声をかけてもらえるのも嬉しい。

この様な仕事だけでは正直生活はできないが、色々な仕事の合間に入ってくるといい意味でメリハリができてモチベーションが上がる。住んでいる自治体からの依頼、地元であるのもやはり嬉しい。

こうして私は市民健康課からの電話を楽しみに待つこととなる。実は私の中で何ヶ所か「電話がかかってきた時点で楽しい仕事確定リスト」があり、市民健康課もはれてそのリスト入りをしたわけである。

そして三度目の電話が鳴る。あの市民健康課からだ。受話のボタンを押しながら私は「やります」とフライング返事を行う。満面の笑みだ。「えっ?島袋さんのお電話ですよね…」「そうです!ウォーキングイベントの件ですよね?」「あ、いえ。健康診断の結果があまりよろしくなくて、その後どうだったのかなとお話を伺いたく…」

健康指導のお電話であった。私の顔から笑みは消え、上の空で様々な数値を聞くのであった。

(それからコロナ禍で司会のオファーは来ておりません)

モバイルプリンスはゆるキャラ枠です

by
関連記事